結果分析と展望
4日に投開票された東京都議会議員選挙で、公明党の23候補は全員が当選した。都議選の完勝は1993年以来8回連続。自民党は33議席を獲得して第1党を奪還し、都民ファーストの会が31議席で第2党となった。公明党が新たな完勝の歴史を刻んだことは、都政安定の要としての役割と、都民の命と暮らしを守る実績や政策が高く評価された結果と言えよう。公明党候補の選挙結果や、各党の状況、マスコミの論評などについてまとめた。
公明党の底力
下馬評覆し23氏が勝利。10選挙区でトップ当選
党派別議席数・得票数・得票率
公明党は候補者を擁立した21選挙区で23人が全員当選し、8回連続となる完全勝利を果たした。全国の党員、支持者の皆さまによる絶大な支援で勝ち得た結果である。
今回の都議選は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「まん延防止等重点措置」が適用される中、野党共闘などの影響もあって「厳しい選挙戦を強いられた」(産経)。実際、4日夜にNHKが報じた投票日当日の出口調査では、公明候補の半数以上が当選圏外だった。
しかし、苦戦の下馬評を覆す大勝利によって、公明党の底力を示すことができた。
投票率は過去最低だった1997年の40.80%に次いで2番目に低い42.39%で、前回選挙(51.28%)より8.89ポイント下がった。
公明党は、候補者を立てた21選挙区での総得票数が63万810票で、得票率は18.20%となり、前回より0.23ポイント上昇した。
選挙区別の得票率を見ると、北多摩1区の27.95%が最も高く、荒川区の27.23%が続き、足立区、八王子市、北区、葛飾区、豊島区、中野区で20%を超える高い得票率となった。
21選挙区における絶対得票率(当日有権者数に対する得票割合)は7.69%と前回の9.13%を下回ったが、荒川区の11.53%を筆頭に、北多摩1区、足立区が10%を超えたことは特筆に値しよう。
このほか、荒川区をはじめ、江東区、品川区、板橋区、練馬区、葛飾区、江戸川区、八王子市、町田市、北多摩1区の10選挙区でトップ当選を勝ち取った。このうち、板橋、葛飾、江戸川の各区では新人が初陣を飾った。
今回の都議選完勝は、秋までに実施される次期衆院選の勝利に向けて弾みを付ける形となった。
各党の消長
自民が議席伸ばし第1党に。
都民ファは14議席減で後退。
立憲と共産の共闘に温度差
公明党が候補者を立てた21選挙区別の得票数・得票率・絶対得票率
自民党が選挙前の25議席を上回る33議席を獲得し、都議会第1党に返り咲いた。ただ、上積みは8議席と小幅にとどまった。
前回、55議席を獲得して、大きく躍進した都民ファーストの会は、その後、幹部に対する不満などを理由に離党者が相次ぎ、選挙前には45議席まで減少。今回、さらに14議席減らして31議席となり、第2党に後退した。
8議席だった立憲民主党は、15議席に増やした。選挙前には、議席数が20台半ばに届くのではないかとの見方もあったが、思ったよりも伸びなかった。
日本共産党は、前回と同じ19人が当選した。
立憲と共産は今回、定数1?3の選挙区の一部で候補が重ならないよう調整し、"共闘路線"をアピールした。しかし、立憲が議席を伸ばす一方で、共産の獲得議席は前回と変わらなかった。
朝日新聞社が実施した出口調査によると、共産候補がいない7選挙区で、共産支持層の77%が立憲候補に投票。一方、立憲候補が不在だった12選挙区では、立憲支持層で共産候補に投票した人は51%にとどまっていたという。
選挙区別に見ると、府中市(定数2)では、共産候補よりも無所属の候補に立憲支持層からの票が多く集まった。墨田区(定数3)では、立憲支持層で、共産候補よりも都民ファ候補に投票したと答えた人が多かった。
「立憲支持層は、共産支持層ほど野党共闘に熱心ではない」(朝日)と指摘されるように、温度差があることは明らかだ。
日本維新の会と東京・生活者ネットワークは、ともに1議席を獲得した。
国民民主党、嵐の党、れいわ新選組は議席を獲得できなかった。
都政安定と公明の役割
議会構成が大きく変化。引き続き合意形成の要に
今回の選挙では、第1党に返り咲いた自民党でさえ当選者が33人にとどまり、第2党の都民ファーストの会と拮抗するなど議会構成は大きく変わった。政党・会派間における意見集約に混乱を招く可能性があり、小池百合子都知事の都政のかじ取りは難しくなりそうだとの見方が広がっている。
このため、合意形成の要役を担ってきた公明党の存在が一層重要になる。公明党は、引き続き都政の安定をリードしていく方針だ。
今回の選挙で有権者が重視した問題について読売新聞の調査では、「新型コロナウイルスへの対応」が27%で最も多く、「東京五輪・パラリンピックへの対応」が12%、「教育・子育て支援」「医療・福祉」が9%だった。
コロナ対策で都議会公明党は、計49回397項目の提案を都に行い、多くを実現。区や市で独自の取り組みも後押ししてきた。さらに、教育や子育て支援、医療・福祉を含めた幅広い分野の実績と、「チャレンジ8」などの政策を訴えたことが、有権者の支持を集めたことは間違いない。
東京五輪に関しても公明党は、感染状況によっては無観客を視野に「安全・安心の具体策を徹底してもらいたい」(山口那津男代表)と現実的な対応を政府に求めた。
マスコミの論評
知事、協調路線に転換か
各党の選挙結果をマスコミはどう見ているか。
自民党が思うように議席を伸ばせなかったのは、「菅政権の新型コロナウイルスや東京五輪の対応への根強い不満を浮き彫りにした形」(日経)との見方が大勢だ。
自公両党の選挙協力に関して朝日新聞は、公明党の候補が出なかった20の選挙区で公明支持層の82%が自民に投票したとの調査結果を基に「『自民回帰』が鮮明」と分析している。
前回、「小池旋風」で躍進した都民ファーストの会が議席を大幅に減らした要因は、「政党としての地道な活動を欠いた姿を、有権者はよく見ていたに違いない」(読売)と指摘されている。
立憲民主党は議席を増やしたが、予想を下回り「菅政権への批判票の受け皿になったとは言えそうにない」(朝日)、「自公と都民ファーストの会の間で埋没」(読売)と存在感を示せなかった。
一部選挙区で候補者を一本化した日本共産党との選挙協力については、一定の効果を示したとの見方が多い。しかし、支持団体の連合が反発し、他の野党も批判。次期衆院選で「野党各党の共闘が奏功するかは未知数」(毎日)と疑問の声も。
自民の第1党奪還により、都民ファの特別顧問でもある小池知事は都政運営の軌道修正を迫られるとみられ、「当面は各党の勢力バランスを意識した協調路線が軸になる可能性がある」(日経)。