早期避難へ技術を総動員
山口代表ら 気象観測船「凌風丸」視察
公明党地域気象防災推進議員連盟(会長=山口那津男代表)の山口代表は23日、東京都港区で、局地的豪雨をもたらす線状降水帯の予測精度向上に重要な役割を担い、今年3月に完成した気象庁の海洋気象観測船4代目「凌風丸」を視察し、運用状況を調査した。輿水恵一事務局長(衆院議員)、横山信一、竹谷とし子の両事務局次長(ともに参院議員)が同行した。
田端仁船長(右端)から水蒸気の観測装置について説明を受ける山口代表(左端)ら=23日 都内
近年、頻発する線状降水帯は、発達した積乱雲が次々と発生し、数時間にわたって停滞することで大雨をもたらす。気象庁は、地域住民の早期避難などに生かすため、発生の可能性を12?6時間前に伝える「半日前予測」について、都道府県単位にまで絞って警戒を呼び掛ける新たな運用を5月27日から始めた。
視察では気象庁の森隆志長官が、「凌風丸」と「啓風丸」の2隻の観測船を運用し、線状降水帯の予測データ観測や気候変動の監視などのため、航海日数は年間約220日に及ぶと報告。雨雲のもととなる海上からの水蒸気流入を正確に把握するため、GNSS(全球測位衛星システム)アンテナを設置し、大気中の水蒸気量が多くなるほど人工衛星から届く電波が遅れる現象を利用し、観測していると説明した。
その後一行は、GNSSアンテナや、気球を飛ばして上空の気温や湿度を直接観測する装置、最新鋭の航海機器を備えた操舵室などを視察した。
視察後、山口代表は「住民の早期避難に結び付けるため、予測精度を高める観測船の役割は大きい。最新鋭の観測機器やデジタル技術も総動員して集積したデータが適切に活用され、国民の命と暮らしを守る取り組みを期待したい」と語った。
■公明、強力に推進
これまで、豪雨災害を引き起こす線状降水帯の発生を予測することは困難だったが、気象庁は気象観測船のほか、海上保安庁や民間の船舶の協力も得て観測体制を強化。気象予測の計算に使う新たなスーパーコンピューター「富岳」の運用を今年3月に開始し、半日前予測に活用している。2029年には、半日前予測の範囲を市町村単位まで絞り込む方針だ。
公明党は線状降水帯の予測精度向上に向け、施策を強力に推進してきた。20年10月の参院代表質問では、山口代表が「早期避難に直結する線状降水帯の観測・予測技術の向上は喫緊の課題だ」と指摘。21年度から始まった「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」や、昨年7月に改定された政府の「国土強靱化基本計画」に、予測精度向上に向けた技術開発や、デジタル技術の活用が盛り込まれた。