党女性委・医療制度委などの会合から
原田美由紀・東京大学准教授の講演要旨
公明党の女性委員会(委員長=竹谷とし子参院議員)と医療制度委員会(同=秋野公造参院議員)などは3月21日、参院議員会館で会合を開き、東京大学の原田美由紀准教授から、将来の妊娠のための健康管理をする「プレコンセプションケア」について講演を聴きました。その要旨を紹介します。
■出産率、年齢に関係
妊娠前のケアを指すプレコンセプションケアを充実させるには、個々人がヘルスリテラシー(健康に関する知識を入手して理解し活用する力)を高めていくことが不可欠と考えています。
不妊治療を経験している夫婦は約5.5組に1組。日本産科婦人科学会によると、2021年に体外受精や顕微授精といった「生殖補助医療」で生まれた子どもは、過去最多の6万9797人。同年の出生児の「約12人に1人」に相当します。
不妊治療を受けている人の年齢分布を見ると、39歳がピークとなっています。年齢別の出産率は、40歳で10%、43歳で4%と年齢の上昇とともに下がっていきます。
公明党の主張で、22年度から保険適用が広がった体外受精や顕微授精は、治療開始時に女性が40歳未満なら子ども1人につき6回まで、40歳以上43歳未満は同3回までが条件となっています。この年齢制限については、当時さまざまな声がありましたが、先述した数値を見れば、妥当と言えるのではないでしょうか。
まさに、女性の妊孕性(妊娠のしやすさ)は生物学的年齢に大きく依存していると言えます。実際、月経が順調に来ていても、特に30代後半から妊娠しにくくなります。なぜなら、卵子は、出生後には新たに作られないため、年齢とともに減る一方だからです。
また、年齢が上がるにつれ、妊娠率が減少して流産率が上昇します。その理由は、染色体の数に異常のある胚「異数性胚」の割合が関係します。これが出現するのは、40歳では約6割を占め、30代前半の2倍に相当するなど、卵子の質は年齢とともに低下します。
原田氏(左端)から講演を聴いた竹谷(向こう側中央左)、秋野(同右)の両委員長ら=3月 参院議員会館
■不妊治療成績に良い影響
「自分たちにできることはありますか?」。不妊治療中のカップルからよく聞かれる質問です。答えはYESです。年齢による衰えは避けて通れませんが、プレコンセプションケアは妊孕性を維持するために役立ちます。
基礎研究の結果から、妊孕性に関わる最も重要な要素である卵巣機能は、生物学的年齢のほか、生活習慣や全身の健康状態に左右されることが明らかになっています。つまり、良好な卵巣機能には、卵子を育てる良好な卵胞環境が必須です。これが乱れてしまうと、妊娠成立の妨げとなります。例えば、喫煙は卵巣機能に悪影響を与え、閉経が早まるリスクが明らかになっています。卵巣の血流低下や酸化ストレスを生じさせ、卵子の育つ環境を悪化させるためです。
一方、妊孕性に関する多くの研究では、栄養・食習慣との関連が調査されてきたものの、心身の健康が妊孕性に与える影響について包括的に調査した研究はありませんでした。
そこで、私自身が所属する東京大学医学部付属病院などの施設において、体外受精治療を受けた291組のカップルを対象に、「生活習慣が体外受精治療の成功率に与える影響の解明」をテーマに調査を行いました。その結果、?食習慣?生活習慣?不妊に関する心理的ストレス―が独立した因子として治療成績と関連することが示されました。
具体的には、食習慣については、週に3回以上、オリーブオイルを摂取した方が「統計学的に有意」との結果が出ました。生活習慣では、1日7時間以上の睡眠をする人ほど良い影響があり、パートナーが喫煙している場合は悪い影響があることが分かりました。さらに、不妊治療中のQOL(生活の質)のスコアが高い人ほど、良い影響があることも明らかになりました。
ほかには、悪影響を与える因子として、「36歳以上」または、「橋本病の合併症」は統計学的な有意差がありました。
今回の調査で示された傾向は、最初の一歩にすぎません。正確な知識を得て健康的な生活を送ることは、将来の健やかな妊娠・出産や、より質の高い生活の実現につながります。さらなる研究を通じて、妊孕性の維持・改善などに影響する因子を明らかにして、多くの人に役立てていただけることを願っています。
プラスになる主な因子
●週3回以上のオリーブオイル摂取
●1日7時間以上の睡眠
●高いQOL(生活の質)のスコア
※東大医学部付属病院などの研究結果から