公明新聞:2016年11月9日(水)付
学業・生活支える奨学金に
高すぎる成績要件は疑問
党PT、学生、学校長に実情聞く
公明党給付型奨学金推進プロジェクトチーム(PT、座長=富田茂之衆院議員)は8日、衆院第2議員会館で会合を開き、返還不要の給付型奨学金の創設に向け、現役大学生や高校の校長から、進学に対する経済的支援について実情を聞いた。
このうち、母子家庭だという私立大学に通う3年生女子は「現在、大学の寮で暮らしている。仕送りはなく、無利子と有利子の奨学金を借り、大学独自の給付型奨学金を受けて、アルバイトもしている」との状況を説明。給付型奨学金について「学費や生活費を賄うのに十分な額を」と訴えた。
また、進路相談の際に「進学せず働くべきだ。通信教育でもいいのではないか」と言われた過去に触れ、「大学独自の給付型奨学金がなければ中退していた。今は、卒業後に就職して、支援を受ける側から支援する側に回りたいという希望が持てている」と語った。
一方、児童養護施設に入所後、民間の給付型奨学金を活用しながら私立大学の夜間部に通う4年生男子は、進学を一度諦めた経験を振り返りながら「大学入学前は経済的な壁が高く、進学が夢や希望をかなえる手段だという考えに至らなかった」と主張。
その上で「親など身寄りがないため、返せなくなった場合を考えると貸与型は難しい。民間の給付型も、多くがこれさえあれば安心という額ではない。自分と同じ思いを後輩たちがしないためにも給付型奨学金を実現してほしい」と求めた。
東京都立文京高校の久保淳校長は、給付型奨学金対象者の成績要件や学校推薦に当たり、「5段階評定は、相対評価でなく絶対評価だ。平均3.5以上は、間違いなく高校3年間、きちんと頑張ってきたと言える」と語った。
会合終了後、富田座長は記者団に対し、PTでのヒアリングや議論を踏まえ、給付型奨学金の制度設計に関する考えを述べた。対象者については「児童養護施設出身者や生活保護世帯に加え、住民税非課税世帯を一定程度、対象にしないと国民の納得は難しい」と指摘。支給額は「3万円では少ないという意見が多い。5万円台まで乗せられる制度を提案したい」と語った。
成績要件では「仮に要件を決めるとしても、一部で言われる評定平均値4.3ではなく、従来、無利子奨学金が受給できた3.5が良いのでは」と述べた。
財源に関して、一部で提案されている特定扶養控除見直しや教育国債発行については「財政法改正や税制改正はすぐにはできず、国民の納得を得られるのかも疑問だ」とし、教育職などの奨学金返還免除廃止で生まれる財源を活用したいとの考えを示した。