美しく豊かな海 いつまでも
公明新聞:2017年7月16日(日)付
てい談
一般社団法人JEAN事務局長 小島あずささん
党海ごみ対策推進委員会 事務局長(参院議員)横山信一氏
党海ごみ対策推進委員会 副委員長(参院議員)竹谷とし子さん
あす17日は「海の日」です。美しく豊かな海をどう後世に残していくか。ここでは、全国規模で海ごみの調査や清掃を実施している一般社団法人「JEAN」の小島あずさ事務局長と公明党海ごみ対策推進委員会の横山信一事務局長、竹谷とし子副委員長(ともに参院議員)に語り合ってもらいました。
漂着するごみ対策が急務 横山
家庭、街からの排出が7割超 小島
竹谷 もうすぐ夏本番を迎えます。子どもたちが海や山に出掛け、自然に触れる絶好のチャンスです。
横山 日本は海に囲まれた海洋国ですし、地球環境の保全という観点からも、海の果たす役割が一層、高まっています。しかし近年、ごみ問題が深刻になってきました。
小島 海ごみ調査のため、長崎県の奈留島という島を訪れたことがありますが、崖の下にある海岸に大量のごみがありました。人の行けない場所ですから、全部、海流に乗ってきたことになります。
横山 私も山形県の飛島で、大量のごみが漂着しているのを目の当たりにしました。
その量は清掃活動で、きれいにできるレベルではなく、早急な対策を講じなければと痛感しました。
小島 活動を始めた当初、海岸に流れ着くごみの多くは、海に遊びに来た人や漁業関係者が出すと考えていました。
しかし、実際に個数などを調べてみると、私たちの普段の暮らしの中にある、家庭や街から排出されたものが7割以上を占めていることが分かりました。いろいろな物が河川を経由して、海に流れ出ています。
竹谷 海ごみは都市部はもちろん、外国からも流れて来ます。一方、処理は海岸や島のある自治体が担っていることもあり、対応が難しいですね。
小島 その通りです。また最近、特に問題になっているのがプラスチック製品です。環境省の資料によると、日本からだけでも年間6万トン(推計)が海に流出しています。
ハワイのレイサン島では、成鳥が羽を広げると2メートルにもなる大型の海鳥(コアホウドリ)のヒナ3羽の死骸から、数多くの日本製プラスチックのごみが見つかりました【写真】。親鳥が餌と間違えてヒナに与え続けたため、胃にたまり、餓死してしまったようです。
海ごみが、海の生物に与える影響は計り知れません。2050年ごろには、海の中にいる魚の量よりも、プラスチックごみの方が上回るとの試算が、16年1月にスイスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で発表されました。
回収困難な物質
マイクロプラスチックの流出防げ
竹谷 近年、マイクロプラスチック問題が注目されてきました。
小島 大きさ5ミリ以下のマイクロプラスチックは、海岸の清掃活動では拾えませんし、一度海に流出すると回収するのは極めて困難です。
また、石油からできているため、海水中に溶け込んでいるPCB(ポリ塩化ビフェニール)やダイオキシンなどの有害な化学物質とくっつく性質があります。
こうした化学物質は、食物連鎖を経ていくうちに、生物濃縮といって、どんどん濃くなっていきます。
横山 人への影響があるとの指摘もあります。
小島 マイクロプラスチックを食べた魚介類や海鳥などの血液や脂肪の中に、有害な物質が蓄積されるため、食物連鎖を通して、人の体に悪影響がないとは言い切れません。
これ以上の流出を食い止めないと、未来の世代に申し訳が立ちません。
環境問題に熱心な公明に期待 小島
理解広げ、国民の意識を喚起 竹谷
横山 プラスチックごみによる海洋汚染の問題は、15年にドイツで開催されたG7エルマウ・サミット首脳宣言に「世界的課題」と明記されるなど、国際的な協働が不可欠な課題として受け止められています。
既に各国では、レジ袋の規制など、さまざまな取り組みが行われています。フランスでは、使い捨てのプラスチック製食器を禁止する法律が成立しました。米国でもマイクロビーズが規制されています。
一方、日本では海岸漂着物処理推進法に基づき、自治体に海ごみの回収・処理費用の補助をしています。しかし、プラスチックごみへの対応は遅れており、マイクロビーズについては、化粧品業界の自主規制にとどまっています。日本はG7加盟国として、もっと積極的に取り組むべきです。
竹谷 公明党は、5月中旬に「海洋ごみの処理推進を求める提言」を取りまとめ、環境相と国土交通相に申し入れました。その中で、マイクロビーズの使用規制や、国による啓発や環境教育の必要性などを強く訴えています。
女性の視点からも言えることですが、問題が明確になると関心が高まり、日々の行動につながります。
マイクロビーズ(スクラブ剤)入りの洗顔料などを知らずに使っていても、環境への悪影響を知れば、買い物の選択基準が変わってくるでしょう。知識と意識と行動が大事です。
横山 提言には、民間団体の活動を後押しする内容も盛り込んでいます。JEANをはじめとする民間団体や、自治体、業界ともしっかり連携しながら、国の対策を進めていきたい。
小島 公明党は海ごみに限らず、もともと環境問題に熱心に取り組んでいると感じていました。私たちの草の根の活動にも真摯に向き合い、じっくりと耳を傾けてもらえるのが何よりもうれしいです。
竹谷 ありがとうございます。20年東京五輪・パラリンピックでは、食品の大量消費が予想されます。再利用できたり、エコ素材の食器類が提供され、それを消費者が選ぶような国民運動を推進するなど、美しく豊かな海を残していく不断の努力を続けていきます。